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5 闇の城

Penulis: 内藤晴人
last update Tanggal publikasi: 2025-06-06 18:30:00

 長い階段を昇り切ると、唐突に視界が開けた。

 薄暗がりに慣れた目には、昼下がりの日差しはあまりにも眩しく、アウロラは思わず目を細める。

「これが吾の居城……闇の城だ。さして面白いものがあるという訳ではないが」

 ベヌスが指差す方に視線を向けると、そこにはその言葉通り灰色の城があった。

 神殿に来る途中に遠目には見たが、間近に見るそれはアウロラにとって今まで見たことのないほど大きく立派な建造物だった。

 言葉もなく城の尖塔を見上げるアウロラに、ベヌスは柔らかく微笑む。

「吾には過ぎた代物だ。さりとて王たるもの示しがつかぬと皆が言うのでな」

 正直、持て余している状態だ。

 そう言うべヌスに、アウロラは驚いたように数度瞬いた。

「城内へ参るぞ。吾から離れるな」

「かしこまりました」

 僅かに会釈すると、アウロラはべヌスに従って歩き出す。

 そして、城内に招き入れられたアウロラは、初めて見る光景に言葉もなかった
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  • 始まりの物語─青き瞳の巫女─   39 独白

     陛下から賜った短剣を首筋にあて一気に引こうとした瞬間、わたくしはまたしても恐ろしいものを見てしまいました。 そこは、まがいもなく闇の神殿で、石畳の上には二人の武人が倒れていました。 お一方は見事な金色の髪をしておられるところからみると、光の領域の方でしょう。 もうお一方は漆黒の髪に黒い甲冑をまとっておられるので、闇の領域にかかわる方なのだと思います。 そんなお二人に剣を向けていたのは、一人の少年でした。 長い黒髪に漆黒の瞳を持つその少年は、端正な顔に薄笑いを浮かべておりましたが、感情はまったく読み取ることはできません。 ですが、わたくしにはあることがわかりました。 無慈悲に剣を振り下ろそうとしている少年の『中』には、陛下がおられると。 けれど、少年は陛下でありながら陛下ではないのです。 疑問に思って目を凝らしてみると、陛下に隠れるようにして、少年の自我はこちらに背を向けて泣いているのです。 ……そう、陛下がどういう訳だがわかりませんが、この少年を取り込もうとしているのです。 なぜそんなことになってしまったのか。 どうして陛下はこの少年と一体化しようとしているのか。 わたくしには、その理由はまったくわかりません。 けれど、これだけはわかります。 石畳で倒れている二人の武人は、陛下に取り込まれようとしているこの少年に殺されてしまう、と。 このままではいけない。 陛下に、この少年に、罪を犯させてはならない。 なんとしても止めなければ。 けれど、わたくしの声は届きません。 当然です。わたくしはその場にいないのですから。 これは、闇が巫女であるわたくしに見せている光景なのです。 このまま時が流れたら起きるであろう未来の光景なのでしょう。「巫女殿! いけません!」 背後から、不意に声が聞こえると同時に、恐ろしい光景は消え失せました。 婀霧様がわたくしを気遣って、こちらに向かい駆けつけてくださったのです。 刹那、首筋が熱くなりました。 目の前が次第に暗くなっていき、足許がおぼつかなくなっていきました。「巫女殿、なんてことを!」 婀霧様は赤く濡れた床に膝をつき、わたくしを抱き起こしました。 自らのマントを引き裂くと、それをわたくしの首筋にあてて必死に止血しようとしてくださっているのがわかりました。 けれど、とめどもな

  • 始まりの物語─青き瞳の巫女─   38 呪い

     婀霧とディーワ、両者の叫びがベヌスの耳に届いたかどうかはわからない。  けれど、真紅の沼に膝を付くべヌスは嗤っていた。  光を失いつつある漆黒の瞳をディーワに向け、呪いの言葉をつぶやく。 「以後、闇は安息をもたらすものにあらず。人々に恐怖をもたらすものとなろう。恨むなら自身を恨め、光神よ……」  言い終えると同時に、ベヌスの身体は崩れ落ちる。  赤い沼に倒れた身体は、程なくして黒い霧となり四方へと散っていった。 「……これは一体?」  驚きの声を上げる婀霧。  一方ディーワは、一部始終を見届けると重いため息をついた。 ──その身は滅びても、精神はこの世に遺すか。それほどまでに……──  私を恨んでも恨みきれぬ、という訳か。  そう吐き出すように言うと、ディーワは目を閉じ頭を揺らす。  ほぼ同時に、その輪郭は揺らめき消えていく。  水の結晶の効力が切れかけているのだ。 「待ってください、大主! 私達はどうすれば……?」  光神の全権代理人たるカイは、その任を放棄して去った。  その言葉が本心であるならば、戻ってくることはないだろう。 ──これ以上……流血は、無用。婀霧、そなたが……に代わって……──  途切れ途切れに聞こえてくる言葉を耳にした婀霧は、思わず大きな声を上げる。 「私が? 私に和議を結べと? それは……」  あまりにも荷が重い。  自分より相応しい者がいるのではないか。  そう固辞しようとした婀霧だったが、伝える前に光神の姿は光の粒となって霧散する。  同時に水の結晶は内包していた力を使い果たし、ひび割れれ粉々に砕け散った。  残された婀霧はしばし呆然と立ち尽くしていたが、すぐに我にかえり周囲に視線を巡らせた。  ブイオ攻略戦の折の犠牲者が納められた無数の棺。  和議を結ぶのであれば、彼らを家族の元へ返さなければ。  そして。  婀霧は、アウロラとベヌス、二人分の血を吸った短剣を拾い上げる。  未だベヌスの血で赤く染まっている刃をマントで拭うと、アウロラの棺のかたわらに膝を付く。  そして、改めて短剣をアウロラの手に握らせてやった。 「巫女殿、あなたの思いは、私が引き継ぎます。闇の領域と和議を結んで、この争いを終わらせます」  

  • 始まりの物語─青き瞳の巫女─   37 懺悔

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  • 始まりの物語─青き瞳の巫女─   35 再会

     昼間幾多の生命が散っていった平原を、月明かりが照らしている。 その中を、漆黒の駿馬が駆け抜ける。 乗り手は言うまでもなく闇の神にして王たるべヌスである。 彼が目指しているのは、ブイオの砦。 敵の手に落ちたその場所へ一人で行こうとする彼を、ノクトを始めとする重臣達は止めた。 確かに使者からもたらされた書状にも、一人で来いとは書いていない。 けれど、べヌスは頑として首を縦に振らなかった。 その理由は、アウロラにある。 彼女はただ一人光神の本陣で、諸将と対峙したのだ。 神であり王である自分が、一介の巫女である彼女にさせてしまったことをしない訳には行かない。 そんな矜持と後悔の念が、べヌスをとらえていたのである。 こういった理由で、彼は一人ブイオへ向かっていたのである。 やがて視線の先に、陥落した砦が浮かび上がって見えた。 かつては夜通し明かりが焚かれていたその砦も、今は黒い塊にしか見えない。 飛び降りると、べヌスは手近な杭に馬を繋ぐ。 そして、静まり返るかつての砦に向かい呼びかけた。「弟御、来たぞ。どこにいる?」 と、暗がりの中からぼんやりと明かりが近づいてくる。 思わず腰の剣に手をかけ身構えるべヌスの前に現れたのは、甲冑姿の女性だった。 あの人は、確か……。「わざわざのお出まし、感謝いたします。私は弟君の補佐役……」「……婀霧、だったか?」 その一言で、婀霧は凍りついたように立ち尽くす。 それほどまでに自分は恐ろしい顔と声をしていたのだろうか。 べヌスは取り繕うべく何か声をかけようとしたが、うまく言葉が出てこない。 小さく吐息をもらすべヌスを前に我に返ったのだろうか、婀霧はあわてて一礼する。「失礼いたしました。弟君がお待ちです。どうぞこちらにお越しください」

  • 始まりの物語─青き瞳の巫女─   34 後悔

     胸騒ぎを感じて、カイは手綱を引いた。 一瞬闇の軍勢が迫っているのかと思ったが、これは敵意ではない。 儚げで悲しげで強い意志がその原因であることに気が付いて、カイは思わず周囲を見回す。 そのような存在は彼が知る限りただ一人、闇の巫女アウロラである。 だが、本陣に拘束したその人がこの戦場にいようはずがない。 その時だった。 かたわらを固める兵達が、上空を見上げている。 中にはある一点を指差している者もいた。 何事かとカイはそちらに視線を移す。と、遥か上空には使者の証である薄藍の布が、糸の切れた凧のように漂っている。 なぜこのような所に。 疑問に思いながらも、カイは風上に視線を巡らせる。 その方向にあるのは他でもない、陥落したブイオの砦だった。 胸騒ぎが、嫌な予感に変わる。 そこからとって返したい衝動に駆られたが、今は戦の真っ最中である。 総大将がそのようなこと、できようはずがない。 そのカイの苛立ちにも似た内心を悟ったのだろうか、脇を固める重臣達が口々に言った。「弟君、いかがでしょう。そろそろ退かれては……」「我々の力を知らしめるのには、もう充分なのではありませんか?」 一瞬ためらった後、だがカイは首を左右に振る。 相手が防御に徹しているのは、必ずしもこちらが圧しているからではない。 べヌスがあえて防戦に全兵力を傾けていることに、カイは気が付いていた。 その証拠に、派手に戦闘が行われている割には、双方の犠牲はさほど出ていない。 ここで退いてしまっては、自分にとっては最良の結果ではあるが、兄である光神は納得してくれないだろう。 さてどうするか。 カイが決断を下しかねていた、その時だった。彼方から、甲高い音が聞こえた気がして、カイは長い耳をぴくりと動かす。 神経を聴覚に集中し、研ぎ澄ませる。 途切れ途切れに聞こえてくるのは、伝

  • 始まりの物語─青き瞳の巫女─   16 髪飾り

     それから、慌ただしく時は流れた。  サラが上手く話をつけてくれたのか、特にお咎めが無かったアウロラは、前にも増して巫女の勤めに励んだ。  そんな彼女に、マルモは呆れたように吐息をつく。 「どうしたんだい? あまり根を詰めると、肝心の式まで身体がもたないよ? 」  そう、正式なベヌスの即位式は目前に迫っている。  領域内の有力者ばかりでなく、光神とその従者も来訪するとあって、城内は上を下への大騒ぎになっていた。 「あんたの舞はもう完璧だし、この上何をしようって言うんだい?」  首をかしげ

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  • 始まりの物語─青き瞳の巫女─   14 宴の間

     宴席へと向かう足が、わずかに震える。 賑わいが近づくにつれ、会話の内容が途切れ途切れに耳に入ってくる。──……少女がうずくまって……羽根が……甲高い声で笑い……────……アルタミラ殿の消息を……────兄者の許しがいただければ……── はたと、アウロラの足が止まった。 どう

  • 始まりの物語─青き瞳の巫女─   10 騒動

     いつもであれば何かと理由をつけて城を抜け出そうとするべヌスが、今日はなぜか文句一つ言わず精力的に政務を行っている。  思いもかけないことに、執務室を訪れたノクトは首をひねる。  執務机の前で書類に向かうベヌスの横に立つと、散々悩んだ挙句、ノクトは無言で自らの掌をその額に当てた。 「何事だ。驚くではないか」  不機嫌そうにその手を払いのけるベヌスに向かい、ノクトは 神妙な顔で告げる。 「発熱などではないようですね。一体どういう風の吹き回しですか、兄上? このぶんでは明日は大嵐が来てしまいますぞ?」 

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